「短編小説は書けるのに長編小説が書けない」
そんな悩みを持つ方は意外と多くいらっしゃいます。このような悩みは、長編小説ならではの書き方のポイントや執筆上の注意点を理解することで解決する可能性があります。
本記事では長編小説が書けないと悩んでいる方に向けて、プロットの書き方や文章執筆時のポイント、注意点等を解説します。
そもそも長編小説ってどのくらいの長さ?
そもそも、長編小説がどの程度の長さなのか、その基準が曖昧という方は多いのではないでしょうか。
一般的に、長編小説の基準は以下の通りです。
文字数:10万文字前後
原稿用紙枚数:400字詰め原稿用紙換算300枚前後
なお、10万文字前後の長編小説を執筆するにあたってかかる期間は約3ヶ月と言われています。この3ヶ月の期間にはプロットを作成したり、推敲したりする工程も含まれます。
ただし、長編小説の執筆にかかる期間は個人差があり、1ヶ月程度で完成できる人もいれば、3ヶ月よりもさらに長い時間を費やす人もいます。新人賞に応募する等、執筆の期限が決まっている場合はご自身の執筆スピードや完成までのスケジュールを考慮したうえで、余裕を持って作業を始めることが大切です。
長編小説のプロットの書き方
長編小説が書けない方の多くはプロットを疎かにしている傾向があります。長編小説の執筆においてプロットは大変重要なキーであり、基本的には事前にきちんと作成しておく必要があります。
以下ではプロットの書き方をご紹介します。長編小説が書けない方は、まずプロット作成から始めてみてください。
メインテーマとサブテーマを決める
プロットを作成する際に、まず決めておきたいのは作品のテーマです。
テーマは小説において最も大事な要素の1つ。「作品を通して一番伝えたいこと」と考えましょう。
物語にはさまざまなテーマがあります。分かりやすいのが「恋愛」や「人間関係」等です。他にも「夢」「成長」「平和」等、テーマにできることは多種多様です。
長編小説の場合、メインテーマに加えてサブテーマを決めておくことで内容を充実させやすく、また長い物語にメリハリをつけることができます。
登場人物を決める
テーマが決まったら登場人物を決めていきます。テーマやストーリー展開によるものの、登場人物の感情や成長等の要素は物語を盛り上げ、おもしろく演出する重要な要素です。魅力的な登場人物を考えることは、読者を物語に引き込むことにつながります。
最初に決めたテーマを踏まえながら登場人物の性格や生い立ち、目的、行動原理等の詳細を設定していきましょう。
世界観を決める
世界観とは物語が展開される舞台の設定です。現実世界に即した設定の舞台を用意することもあれば、まったく存在しない架空の舞台を用意することもあります。一般的に「ファンタジー(ハイ・ファンタジー)」と呼ばれるジャンルの小説は、架空の舞台で物語が展開します。
世界観は読者を物語に引き込む要素の1つであり、登場人物の言動に説得力を持たせる役割を担います。世界観に矛盾があると物語全体がまとまりのない印象になってしまうので、この時点でしっかりと掘り下げておきましょう。
ストーリー(話の流れ)を決める
テーマ、登場人物、世界観が決まったら、いよいよストーリー(話の流れ)を決める工程に移ります。上述した3つの要素を踏まえて登場人物の行動や全体の流れ等を考えます。
長編小説が書けない方の多くはストーリーの一部しか決まっていない段階で文章を書き始めてしまう傾向にあります。後述する「長編小説を書く時のポイント」も併せて参考にしながら、まずは要所を書き出すところから始めましょう。
長編小説を書く時のポイント
続いては、長編小説を書く時のポイントを解説します。
プロット作成の段階で意識すべき内容もあるので、「長編小説のプロットの書き方」と併せて参考にしてください。
「承」の内容を充実させる
小説を書く時に起承転結を考えることは必須ですが、長編小説ではこのうちの「承」を充実させることがとても重要です。承が不足していると物語が進まず、10万文字前後の小説を書くことができません。
「承」は物語における出来事の数だと考えてください。物語の始まりと終わりの間に多くの出来事を用意することで、自然と全体の文字数が増える構成になります。
ただしやみくもに承を用意するのでは読者が飽きてしまいます。新事実が発覚する、盛り上がる展開にする等、読者を引き込む内容を考えることが大切です。
「三幕八場」を意識する
三幕八場とは、人が物語を楽しめる最も自然な構成のことです。物語を1〜8場に等分し、さらに三つのまとまり(一幕〜三幕)に分けて考えた時、以下の構成が理想だと考えられています。
序盤(一幕):1〜2場→状況説明や登場人物の目的等の設定を提示する
中盤(二幕):3〜6場→物語を展開する障害を書く
終盤(三幕):7〜8場→最大のクライマックスと結末を書く
主に映画の脚本で扱われる構成技法ですが、小説を執筆する際もこの三幕八場を意識した構成が重要であると言われています。プロットをつくる際や見直す際に、三幕八場に沿っているかどうかを考えてみましょう。
登場人物の内面をしっかりと描く
登場人物の繊細な心情描写は読者を物語に引き込むために大切です。物語を展開させたいあまりに説明的な表現が続いてしまうと、平坦でおもしろみに欠けるストーリーになります。説明的になりがちだという自覚がある方は、登場人物の内面が分かる描写や会話を適切に取り入れることを意識してみてください。
どうしても難しければオムニバス形式にする
形式に決まりがない場合、オムニバス形式で長編小説を書く方法があります。共通する登場人物や世界観の短編小説を集めて1つの作品にする方法で、10万文字の壮大なストーリーを完成させるよりは取り組みやすい傾向にあります。
オムニバス形式で長編小説を書く場合、1万〜1万5千文字の短編を7〜8つ用意します。ただし新人賞に応募する場合等は、オムニバス形式を不可としている可能性があるため事前に確認しておきましょう。
長編小説を書く時の注意点
最後に、長編小説を書く時の注意点をまとめました。
“無駄”と書きすぎに注意する
文字数が多いことから、長編小説を書く際には不要な描写を入れてしまうケースや、設定等を詳しすぎるくらい書きすぎてしまうケースがよくあります。どちらも注意すべき点で、物語がなかなか進まず作者も読者も疲れてしまいます。
しかし、最初から無駄のない文章を書くことはプロでも不可能です。大事なのは読み返した時に無駄や書きすぎと感じた文章を潔く削ること。これを意識してみましょう。
急いで書き進めない
完成まで長い時間を要するからこそ、書いている途中で「早く完結させたい」と急いで進めたくなることがありますが、これはNGです。急いで書くと状況説明・情景描写と心情描写・会話文のバランスが悪くなり、説得力がない物語や平坦な物語になってしまいます。
特に状況説明や情景描写が多くなってしまうと、退屈な物語に仕上がってしまいます。説明的な文章が多いと感じたら、いったん手を止めることが大切です。
まとめ
本記事では長編小説が書けない方に向けて、プロットの書き方や文章執筆時のポイント、注意点等を解説しました。
長編小説は短編小説より遥かに文章量が多いことから、事前にしっかりとプロットをつくり込んでおくことや、物語中に起こる出来事を考えておくことがとても重要になります。
また、早く完成させたい一心で無駄を増やし、慌てて書き進めてしまうのはNG。必要以上の書きすぎにも注意が必要です。このようなポイントを意識すればおもしろい長編小説を書ける可能性がぐっと上がりますので押さえておきましょう。
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