一般小説や恋愛小説に比べると、サスペンス小説の執筆は少しハードルが高いと感じる人も多いかもしれません。
確かに、読者を魅了するキャラクターづくりや、あっと驚くトリック等、サスペンスには考えなければいけないことはたくさんあります。しかし、書き方のセオリーを覚えれば決して難しいものではありません。
ここでは魅力的なサスペンスの書き方をご紹介します。
サスペンスとは?小説の書き方の基本
サスペンスとは読者が物語を味わっている間、ずっと不安や緊張等のハラハラした感情を抱くような作品のことを言います。
よくミステリー小説や推理小説と混同されがちですが、これらのジャンルと違ってサスペンスでは謎解きがあまり重視されません。
このため、サスペンスでは物語の序盤で犯人や物語をにぎる鍵を明かすことが多く、その真相に近づく過程でスリルや緊張を楽しむことが醍醐味となっています。
それでは、そんなサスペンス小説の基本的な書き方について解説していきます。
プロットを書く
サスペンスに限らず小説の書き方として最初に取り組むべきことはプロットづくりです。
プロットとは、簡単に言えば小説のあらすじのようなもので、物語の方向性やアイデアを整理したりする、いわば小説をつくるための設計図です。
サスペンスのプロットづくりで意識したいのが、物語の山場。
物語のどの辺りで第一の山場をつくるか、どこで小休止を挟むか等を、しっかりとプロットづくりの時点で決めておくことが、上手なサスペンスの書き方の第一歩目です。
詳細をつくり込む
プロットを書き終えたら、続いては詳細な設定をつくりましょう。
まずはキャラクターです。
サスペンスに限らず良い小説の必須条件は、キャラクターが魅力的であることです。
主人公やその他の登場人物の人物像をこまかく設定しましょう。
続いて、ストーリーの主題です。
すなわち「なぜ、そうなったのか」が分かるよう、サスペンスの主題となる犯人の動機をしっかりとつくり込むことです。
読者が「なるほど」と思える動機づくりが、サスペンスの書き方のポイントとなります。
また、おもしろいサスペンスに欠かせないのが伏線であり、ストーリーのどこに伏線を差し込めば一番効果的で読者を引き込むことができるか、しっかりと考えることも重要です。
サスペンスで鮮やかに読者を騙す三つの方法
サスペンス小説で重要なのは、読者が手に汗を握るような展開を続け、ずっと気になる部分をあえて残しておくことです。
そこで、ついに謎が解けるという最後の瞬間まで、鮮やかに読者を騙し続けるための三つの方法について紹介します。
視点で騙す
おもしろいサスペンスとは、スリリングであることが必須です。
スリリングにさせるには「どういうことか分からない」「どうなるのか分からない」状態にすることが重要で、簡単な書き方としては「視点をずらして読者をあざむく」ことが挙げられます。
視点を次々と変更させて、読者を混乱させる方法はサスペンスのオーソドックスな書き方の一つです。
色々な人物からの視点でストーリーを進めることで、読者に真相を隠すことができます。
そして最後に「こういう結末でした」ということをネタばらしすれば、途中で起こるさまざまな出来事が、伏線として回収されます。
時間軸をずらす
時間軸をずらすことで読者を混乱させるのも、良質なサスペンスの書き方の一つです。
例えば普通の時間軸で執筆すれば以下のような順序で物語は展開します。
- 犯人と主人公の紹介
- 犯人が事件に至るきっかけ
- 事件発生
- 主人公が事件を解決
時間軸をずらした書き方をしてみると、以下のように変えることができます。
- 事件の描写
- 事件の詳細
- 主人公が事件を解決
- 犯人の生い立ち、事件に至ったきっかけ
このようにあえて時間軸をずらすことにより、読者は事件の起きた理由が気になって物語に惹きつけることができます。
動機に意外性を持たせる
サスペンスをよりスリリングなものにする手っ取り早い書き方が、動機物語のどこかに意外性を持たせることです。
物語に意外性を持たせる簡単な方法として、動機自体を意外なものにしてしまうことが手法の一つとなります。
例えば、「犯人は芸術家で、血を流している女性の絵にリアリティを持たせたいがために女性を刺殺し、流れた血を使用して絵を描いた」等、動機そのものが異常だと簡単に常人の想像の範疇を超えることができます。
このようにサスペンス小説では、動機が解明された時に、読者が共感はできずとも納得できるような「犯人側の言い分」を用意しておくと良いでしょう。
サスペンスを盛り上げるためのポイント
続いては、サスペンス小説を盛り上げるために必要な三つのポイントを紹介します。
書き出しで読者を一気に引き込む
サスペンスやミステリーの冒頭の書き方では、このような格言があるのをご存知ですか?
「とりあえず冒頭に死体を転がせ」
いわば書き出しの文章はサスペンスの顔。
ここで一気に盛り上げ、読者の好奇心をかきたてることがストーリーを盛り上げるサスペンス小説の書き方です。
ばれないように伏線を散りばめる
サスペンスに大切なのは、謎解きのヒントや伏線です。
最後に伏線が一気に回収され、読者が「あぁ、なるほど、これで全部分かった」「あれはそういう意味だったのか!」と納得してスッキリとした読後感を得る。これこそがサスペンスを読む醍醐味です。
要所要所に、ばれないようにそっと伏線を忍ばせることを意識した書き方を心がけてください。
気持ち良く伏線を回収する
先程も伝えたように、読者が納得して、「あぁ、おもしろかった」と思ってもらうためには、気持ち良く伏線を回収する必要があります。
やってはいけない書き方は、風呂敷を広げっぱなしでストーリーを終わらせることです。
自ら張った伏線はしっかりと自分の手で回収できるように、つじつま合わせ」の技術をしっかりと磨いておきましょう。
まとめ
一見難しそうなサスペンスも、コツと手順、そして書き方さえ覚えれば、意外とスムーズに執筆することができます。
読者をハラハラドキドキさせる良質なサスペンスストーリーを書くためには、何より自分が楽しんで執筆することが大切です。
書いていてどうしても気持ちが乗らない、気分が高揚しない、という場合は、一度客観的に自分が書いたストーリーを読み返してみると良いかもしれません。